研究奨励賞
2022年研究奨励賞 受賞者2


目的・詳細
研究奨励賞 楯
1. 目的
電子科学技術の分野で、将来の発展が期待される独創的な研究に取り組む若い研究者を表彰すると共に研究費を助成し、わが国の電子科学技術の振興並びに産業の発展に寄与することを目的としています。
2. 表彰内容
研究奨励賞 3名
表彰楯並びに研究助成金(1名当たり)200万円贈呈
3. 候補者選考
当財団が定める、選考委員会規則及び研究奨励賞選考規程に基づき、選考委員会で推薦書審査により候補者を選定し、選定候補者から提出された研究内容等を審査し、受賞候補者を内定します。
理事会の承認を経て決定し、11月下旬に結果通知を郵送いたします。
-- 選考委員会へ

●研究課題
「超スマート社会の電子科学技術を支える環境適合な有機電池の創製」

岡 弘樹博士
(大阪大学 大学院工学研究科 テニュアトラック 助教 (工学博士)1994年生)
超スマート社会に向け進化し続ける家電・スマートフォンなどの電子デバイスには、電気エネルギーの貯蔵を担う二次電 池が必要であり、その需要はますます増加している。一方、二次電池には、資源枯渇の問題から、今後、高い環境適合性お よび再利用性が必須となる。リチウムイオン電池を例にとると、コバルトなどの枯渇資源の利用や、再利用に向け金属電極 特有の複雑な分解・分離工程および高温熱処理(>500℃)などが必要であり、その研究・開発が今後さらに進展すると予 想されるものの、リサイクル率は現状数%未満に留まっている。
本研究では、有機分子・高分子・構造体を対象に、これまで材料開発で注力されてきた強固な結合に基づく電荷貯蔵(充 放電)という使用中の機能の向上と、それとはトレードオフの関係にある廃棄時の分解の容易性とが、両立した有機レドッ クス材料を開発する。これらの材料を電極活物質として組み合わせることで、ウェアラブルデバイスなどの次世代の電子デ バイスを支える、軽量かつリサイクル可能で、高起電力を達成しうる究極の有機二次電池の創製を目指す。
研究奨励賞 歴代受賞者(別ページ)
●研究課題
「伝導性電子の量子波的性質を利用した新規インダクタデバイスの開発」

HIRSCHBERGER Maximilian 博士
(東京大学 工学部物理工学科 准教授(博士) 1987年生)
インダクタ(コイル)は電子回路を構成する最も重要な部品の一つである。通常のコイルではインダクタンスの大きさ が断面積に比例するため、デバイスの小型化は困難であった。申請者と共同研究者は、最近、デバイスサイズが小さいほ どインダクタンスが大きくなる、新しいタイプの創発インダクタを発見・実証した。我々は、磁性体であるスキルミオンに 着目してこの研究をさらに発展させ、創発インダクタンスをもたらす新規メカニズムの発見およびその物理特性の解明 を目指す。
サイバー空間とフィジカル空間が融合した調和型社会Society 5.0を実現する上で、相乗効果の高いハードウェアと ソフトウェアの開発は重要な目標である。特に携帯端末や5Gを超える高周波無線通信用途に必要な電子回路では、イ ンダクタデバイスの小型化が課題となっている。本研究では、物性物理学と材料科学の専門知識を駆使して、数100ナ ノメートルサイズで、かつ、大きなインダクタンスを持つ新しいタイプの電子デバイスの実現に取り組む。