高柳健次郎業績賞 2019年受賞者

「有機ELフルカラ-大型ディスプレイ用の
青色発光材料の研究と実用化への貢献」

舟橋 写真

舟橋 正和

(出光興産株式会社 電子材料部 電子材料開発センタ-所長付(材料開発担当)1967年生)

[学 歴] 1993年  3月  東京工業大学 大学院 理工学研究科応用化学専攻 修士課程修了
[職 歴] 1993年  4月  出光興産株式会社 入社
2003年  4月  電子材料部 電子材料開発センター 主任研究員
2008年  7月  電子材料部 電子材料開発センター 所長付
  ● 主な受賞等
平成30年度全国発明表彰 恩賜発明賞受賞

主な業績内容

有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」と路記する)ティスプレイは自発光方式のため、従来の薄型ディスプレイである液晶ティスプレイと異なり、バックライトが不要でシンプルな素子構造をとることが可能で、5mm程度の薄さを実現できる。更に、消費電力、視野角、コントラスト比、応答速度、黒色の再現性、フレキシプレ性等でも液晶に比べて優位性があることが知られている。舟橋正和が開発した技術は、実用レベルの発光効率と長寿命のみならす、製造プロセス性にも優れる青色有機EL発光を実現した。これにより、携帯電話などの小型デバイスから大型TVまでの幅広い有機ELフルカラーディスプレイの実用化に大きく貢献した。

有機EL技術の本命は、スマ-トフォンや大型有機ELTVといったフルカラーディスプレイへの適用であるが、その実現には、色再現性を高めるために色純度が高い光の三原色(赤、緑、青)発光素子が必要となる。しかしながら、2002年頃の有機EL素子の技術水準は、水色や緑色、赤色有機ELについては上市レベルの有機EL材料が存在していたが、発光に最も高いエネルギ-を必要とする純青色有機EL素子においては、色純度、発光効率、寿命特性等を全て満足する有機EL材料は存在していなかった。有機EL素子は、電圧を印加することで、陽極から注入された正孔と陰極から注入された電子が発光層内で再結合して有機EL材料が励起状態になり、これが基底状態に戻る際にそのエネルギーを光として放出する原理を利用したデバイスである。2002年、舟橋らは、再結合と発光、それそれの機能を2つの特定の化合物に役割分担し、それらを組合せた有機EL素子により、純青色発光で、高効率、長寿命化を達成した。

純青色有機ELの先駆的発明である本技術の適用により、有機EL素子における実用レベルでの3原色発光が可能となり、近年の有機ELフルカラーティスプレイを搭載した高機能機器の発展に大きく貞献した。本技術は、2004年に携帯電話のサブディスプレイに適用されたことを皮切りに、2007年から中小型ディスプレイ商品である携帯電話、小型TV、スマ-トフォンに適用された。

舟橋は、その後、さらなる改良・開発を進め、特定構造のアントラセン系化合物と、環構造や置換基等の分子構造を制御した縮合環アミン 化合物を開発した。これら新たに開発した化合物は、純青色発光に向けた電気物性や光学物性等の各種材料特性に好適であるのみならす、 熱的・光化学的・電気化学的安定性を有している。特に、純青色発光のための重要な項目である発光スペクトル制御において、独創的かっ精 緻な分子設計により新規縮合環アミン化合物を創製し、その実現を可能とした。橋は、その後、さらなる改良・開発を進め、特定構造のアントラセン系化合物と、環構造や置換基等の分子構造を制御した縮合環アミン化合物を開発した。これら新たに開発した化合物は、純青色発光に向けた電気物性や光学物性等の各種材料特性に好適であるのみならす、熱的・光化学的・電気化学的安定性を有している。特に、純青色発光のための重要な項目である発光スペクトル制御において、独創的かっ精緻な分子設計により新規縮合環アミン化合物を創製し、その実現を可能とした。

大型ディスプレイ実現には、小型ディスプレイに比べて、より高い特性が要求される。具体的には、発光効率や寿命特性の向上に加え、高温・高真空下の蒸着プロセス安定性に優れる有機EL材料が求められる。舟橋が新たに開発したアントラセン系化合物や縮合環アミン化合物は、大型蒸着装置における蒸着安定性や大面積均-成膜性、長時間連続運転に耐えうる熱安定性にも優れるため、大型有機ELディスプレイ量産製造への適用が可能な純青色材料である。この技術を使用した純青色有機ELは、2013年に大型有機ELTVにも適用された。

その後、舟橋の開発技術は、様々な商品にも応用され、近年の4K有機ELTVの発展及び有機EL市場の拡大に貢献している。