高柳健次郎業績賞 2019年受賞者

「CMOS集積回路によるミリ波超高速無線通信技術に
関する研究開発」

岡田 写真

岡田 健一

(東京工業大学 工学院電気電子系・教授 1975年生)

[学 歴] 1998年  3月  京都大学 工学部 電子工学科卒
2000年  3月  京都大学 大学院 情報学研究科 通信情報システム専攻 修士課程了
2003年  3月  京都大学 大学院 情報学研究科 通信情報システム専攻 博士課程了
[職 歴] 2000年  4月  日本学術振興会 特別研究員
2003年  4月  東京工業大学 精密工学研究所 助手
2007年  4月  東京工業大学 大学院理工学研究科 電子物理工学専攻 准教授
2016年  4月  東京工業大学 工学院 電気電子系 准教授
2019年  4月  東京工業大学 工学院 電気電子系 教授
  ● 主な受賞等
2011年  1月  IEEE/ACM ASP-DAC.Special Feature Award
2011年  4月  文部科学大臣表彰 若手科学者賞
2011年11月  IEEE A-SSCC Best Design Award
2014年  2月  日本学術振興会賞
2015年  6月  末松安晴賞
2017年  1月  IEEE/ACM ASP-DAC.Best Design Award
2017年  4月  文部科学大臣表彰科 学技術賞
2017年  9月  IEEE Radio Frequency lntegration Technology.Best
Paper Award
2018年  6月  電子情報通信学会 論文賞
2019年  6月  電子情報通信学会 業績賞
2011年10月  ドコモ・モバイル・サイエンス賞

主な業績内容

岡田健一氏は、第5世代移動通信システム(5G)等で必要となる80・300GHzのミリ波帯を用いた超高速無線通信技術の分野で世界的に活躍している著名な研究者である。通信速度の向上には周波数帯域幅の拡大とS/Nの向上が必要であるが、現状利用されている6GHz以下の低マイクロ波帯は様々な無線通信システムで用いられており、これ以上の周波数帯域幅を確保するのは非常に困難であることから、ミリ波を導入するのは無線通信技術としては至極当然な方向性であり、今後、益々の利用拡大が期待されている。ミリ波による無線通信技術の普及のためには、安価で大量生産可能なCMOS集積回路技術での実現が必要であるが、従来技術では伝送速度が不十分であった。

岡田健一氏は、CMOS集積回路によるミリ波無線機の研究分野で一貫して世界をリードしており、ミリ波帯における超高速伝送の可能性を大きく広げている。開発した集積回路を用いて小型低消費電力な無線システムを世界に先駆けて実証し、ミリ波帯無線機の実用化を大きく前進させた。岡田健一氏が考案した技術要件のうち、重要なものを列記すると、注入同期現象を用いた超低位相雑音発振器の実現、ミリ波世界初のダイレクトコンバージョン方式による広帯域化と低消費電力化、帰還抵抗とバッシプミキサによる広帯域化が挙けられる。これらの実証として、2014年には60GHz帯を用いた28Gb/sミリ波無線機を実現し、2016年には42Gb/s、2017年には50Gb/s、2018年には120Gb/sの無線伝送速度を達成し、自らの世界記録を次々と更新している。これら研究成果は、多数の学会賞や、主要国際会議での多数の発表論文を通して広く知られている。また、考案された各種の設計技術を元に企業による商品開発が進められており、今後の飛躍的普及により旧T社会インフラを構築する原動力となることが期待される。