高柳健次郎業績賞 2017年受賞者

「オープンソースソフトウェアの開発とグローバル展開及び実用化」

藤田 写真

藤田 智成

(NITソフトウェアイノベーションセンタ分散処理基盤プロジェクト主任研究員1974年生)

[学 歴] 2000年 3月 早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了
[職 歴] 2008年 2月 日本電信電話株式会社入社未来ねっと研究所
2005年 3月 日本電信電話株式会社サイバーコミュニケーション総合研究所
サイバースペース研究所研究主任
2011年 7月 日本電信電話株式会社サイバーコミュニケーション総合研究所
サイバースペース研究所主任研究主任
2015年 4月 日本電信電話株式会社サービスイノベーション総合研究所
ソフトウエアイノベーションセンタ主任研究員(特別研究員)
  ● 主な受賞等
2014年10月 日本電信電話株式会社社長表彰
2015年  2月 情報報処理学会ソフトウェアジャパンアワード

主な業績内容

藤田氏は、200O年からシステムソフトウェアのストレージ、及びネットワーク分野において、次々と萌芽的な技術に取り組み、開発したソフトウェアを誰でも自由に利用改良可能なオープンソースソフトウェア(0SS)として公開し、様々な企業の技術者学生などの世界中の開発者を巻き込みコミュニティを形成、開発を主導し、実用化してきた。ほとんどのOSSが広く普及せずに、失敗していると言われるが、それらのソフトウェアは、NTTグループのサービスだけでなく、国際的に多くの企業で利用されている。また、米国のInternet2プロジェクトなど、数多くの学術プロジェクトでも利用されていることに加え、数干の論文で参照されるなど、学術界にも大きく貢献している。

2000年に,汎用のイーサネットハードウェアで動作するストレージエリアネットワーク技術(iSCSIブロトコル)の取り組みを開始、その成果をOSSとして公開し、開発を主導し、Linuxオペレーティングシステムの主要なディストリビューション(配布形態)に採用されるソフトウェアに成長させた。現在では、iSCSIプロトコルは代表的なストレージエリアネットワーク技術として広く利用されており、その普及に大きく貢献したと言える。

2004年頃から、コンピュータのハードウェアリソースを論理的なリソースとして管理するためのオペレーティングシステムの仮想化技術の研究開発を開始、その成果をLinuxカーネルのストレージ領域に適用し、機能開発に大きく貢献した。ブロックSCSIドライバの開発責任者への任命、カーネル開発の方向性に大きな影響を与える重要な世界的な会議Linux Kernel Summitへの招待など、その功績は開発者コミュニティから高く評価された。

2008年に、コンビューティングとストレージの仮想化技術を統合した基盤を実現するために,複数のコンピュータの内蔵ストレージをネット ワークを介して1つの論理的なストレージに合成する技術をOSSとして公開した。グローバルに広く活用されるソフトウェアになっただけでなく、同様のコンセプトを実現するOSSや複数の商用システムが登場するなど、業界に大きな影響を与えた。

2011年から、Softwre Defined Network (SON)と呼ばれる機能・性能を柔軟に変化させることができるネットワークを実現するための研究開発を開始した。20l1年に、高度な制御が可能な新しい制御プロトコルをサポートしたネットワーク装置を管理するためのソフトウェアフ の研究開発を開始した020l 1年に、高度な制御が可能な新しい制御プロトコルをサポートしたネットワーク装置を管理するためのソフトウェアフ レームワーク、2014年には、成長を続けるインターネットやデータセンタの現在の規模に対応できる経路制御ソフトウェアをOSSとして公開した。ネットワーク装置ベンダやソフトウェアベンダも巻き込み、その開発を主導し、SDNの実現に大きく貢献している。これらのOSSは、様々なOSSプロジェクトからアメリ力国家安全保障局まで、多くの組織で利用されている。