高柳健次郎賞 2024年受賞者
「光ファイバに於ける群速度の制御に関する先導的研究」
川上 彰二郎博士(株式会社フォトニックラティス 創業者・技術顧問 1936年生)
[学 歴] 1965年 3月東京大学大学院 数物系研究科 博士課程 修了
[職 歴] 1965年 4月東北大学 助手
1966年東北大学 助教授
1979年 6月東北大学 電気通信研究所 教授
2000年 4月東北大学 未来科学技術共同研究センター(NICHe)教授
2002年 7月株式会社フォトニックラティスを創業、代表取締役
2013年 3月株式会社フォトニックラティス 取締役
2016年11月株式会社フォトニックラティス 技術顧問 現在に至る
● 主な受賞等
1976年市村清新技術財団 市村学術賞
1996年服部報公会 報公賞
1998年電子情報通信学会 業績賞
1999年電子情報通信学会 功績賞
2000年光産業技術振興協会 櫻井健二郎氏記念賞
2001年IEEE Life Fellow
2002年電子情報通信学会 名誉員
2014年井上春成賞委員会 井上春成賞
2016年発明協会 21世紀発明奨励賞
川上彰二郎博士は、光ファイバ通信の草創期からその研究に従事し、多モードおよび単一モード光ファイバ それぞれについて、伝送容量など諸特性を極限まで高める導波構造を解明・発明した。 同博士は1965年東北大学電気通信研究所に採用され、喜安善市、西澤潤一の研究グループで、当時はまだ 夢の技術であった長距離光ファイバ通信の研究に取り組み始めた。光ファイバの試作は外部の協力を得ながら 理論研究を牽引した。
コア・クラッド2層型分布(ステップ・インデクス)は当時知られていたが、これを最適な屈折率分布(グレーデッ ド・インデクス)にすることで、光ファイバ内を伝搬する多数のモードの群速度が屈折率分布の制御によりモード 次数によらず等化されうることを明らかにし[1]、伝送容量を2桁以上向上させることが可能であることを見いだ した。
1970年にMaurerらから低損失光ファイバの実証が発表され世界的な研究開発が始まった。 光ファイバ 通信の実用化研究の最初の目標になったのは上述のGI(グレーデッド・インデクス)ファイバによる通信であっ た。その方式の実証および実用化が世界中で盛んになった。
そのころ川上彰二郎博士は次に来たるべきは単一モード光ファイバであると考え、階段状分布のコア・クラッ ド間に低屈折率層を設けるW型光ファイバを創案し、分散特性・耐曲がり性に優れた構造を発見した。 ガラス材料の屈折率の波長分散をファイバ構造による分散で補償するという考えである[2]。
GI型多モードファイバは、日本国内を例にとると1970年代後半から1980年代半ばまで主流の伝送媒体で あった。 W型単一モードファイバは1980年代以降にATT社が実用化を推進し米国、ヨーロッパで多用されて いる。
さらに、川上彰二郎博士は、3次元フォトニック結晶を含む多くの光微小部品の開拓を行い、その実用化を行っている。
[1] S. Kawakami and J. Nishizawa, "An optical waveguide with the optimum distribution of the refractive index with reference to waveform distribution," IEEE Trans. Microwave Theory and Tech., vol. MTT-16, pp. 814-818, Oct. 1968.
[2] S. Kawakami and S. Nishida, "Characteristics of a doubly clad optical fiber with a lowindex inner cladding," IEEE J. Quantum Electron., vol. QE-10, pp. 879-887, Dec. 1974.


