第51回 2021年 科学放送高柳健次郎賞 受賞番組

番組名「NHKスペシャル 被曝の森2021 変わりゆく大地」
●放送局:日本放送協会    ●放送日:2021年5月9日(49分間)

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大量の放射性物質の拡散によって無人となった「被曝の 森」。水田や畑が荒れ果て草原や林となり、イノシシやアライ グマ、キツネなどの野生動物が闊歩。森の奥にツキノワグマ が進出してくるなど、この10年で生態系が様変わりした。

科学者と住民による地道な調査・研究からは、被曝のメ カニズムの解明も進む。マツの形態異常が放射線によって 起きるメカニズムの一端が初めて解明。被曝によって、イノ シシやネズミ、そしてサルの体内で何が起きているのか、細 胞・遺伝子レベルで徐々に見えつつある。

一方、避難解除によって「被曝の森」の一部に少しずつ人 が戻り、未来への模索も始まった。 チェルノブイリ、スリーマイルとともに世界の注目を 集める福島。 汚染地帯にカメラを入れ、10年見つめ続けた記録から、未曾有の災害によって、世界に類をみない道を歩む「被曝の森」の 実像に迫っていく。

番組名「よみがえれ神の鳥 特別編」
●放送局:長野朝日放送株式会社    ●放送日:2021年2月21日(55分間)

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絶滅の危機に瀕しているニホンライチョウ。半世紀 前に絶滅したとされていた中央アルプス・木曽駒ケ岳 で、2018年1羽の雌が確認された。別の山から飛来 しすみ着いたとみられる。この好機を逃さず環境省 は、2020年夏、人の手により中央アルプスでライチ ョウの群れを復活させる前代未聞の作戦に打って出 た。

作戦を指揮するのは、ライチョウ研究の第一人者・ 信州大学の中村浩志名誉教授(73/当時)と、その弟 子で環境省の小林篤専門官(33/当時)。雌が抱く無 精卵を、動物園などから提供された有精卵と入れ替 えふ化させようと試みるが、全滅。

二段構えの復活作戦は、北アルプス乗鞍岳からライチョウの親子3組をヘリで移送し放鳥するという大がかりな計画だ。果たして 生息域を広げ、群れをつくることは出来るのか。

3000m級の高山でライチョウの保護活動に奮闘する中村。その背景には亡き恩師への思いがあった。人間がもたらした自然環境 の変化によって、生態系に大きな影響を受けた野生の動植物たち。長期にわたり研究者の師弟らがその情熱で繋いできたライチョ ウの保護活動の現場と彼らの思いに迫った。

番組名 「ネアンデルタール人は核の夢を見るか~高レベル放射性廃棄物の行方~」
●放送局:北海道放送株式会社    ●放送日:2021年5月29日(49分間)

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去年8月、北海道寿都町と神恵内村で、原発から 出る高レベル放射性廃棄物、いわゆる核のごみの 最終処分場選定の応募に向けた動きが明るみと なった。応募の賛否で町が分断されていくなか、 町長は「肌感覚では賛成が多い」として、わずか 2か月で応募に踏み切った。

地層処分に至るまでの最終処分の原点に さかのぼり、1980年代に秘密裏に行われた調査や 旧動燃元職員の証言のほか、処分候補地として 南鳥島を最適とする科学者たちの新たな動きを 伝える。NUMOのトップ近藤駿介理事長は、この 提案にある反応を見せた。

寿都町の吉野寿彦さんは、長年の友人だった町議会 議長らのリコール活動を開始。寿都町職員だった大串伸吾さんは反対の立場から、役場を辞める決断をした。彼の息子は住民説明 会で、町長に率直な質問をぶつけた。 平穏に暮らしていた町民は、いま核のごみとどう向き合うのか。 地質や地震の専門家は、 「地下の危うさ」を指摘する。10万年後まで私たちは責任をもって核のごみを処分できるのか。未来に残せない宿題は、私たち国民 全体に突きつけられている。

■ 放送期間//2020年9月1日~2021年8月31日 ■ 応募放送局/9局 ■ 応募番組数/12番組