第41回 2010年 科学放送高柳記念賞 受賞番組

番組名「神の鳥からの警告」
●放送局:富山テレビ放送株式会社    ●放送日:2010年1月2日(46分)

番組 写真

北アルプス立山・室堂平は、特別天然記念物「ライチョウ」の生息密度が日本で最も高い 場所といわれている。冬は氷点下20℃以下。一年の半分が雪に覆われるその高山帯に危機 が忍び寄っている。去年6月、標高2300mの雪原に姿を現したイノシシの群れを自然保護 官が撮影した。それは本来の生息地ではない野生動物の侵出によって、ライチョウの生息 環境が脅かされているという衝撃的な出来事だった。

本番組は、厳しい自然の中で一年を過ごすライチョウの生態を克明に描きつつ、その環 境が温暖化によって悪化しつつあることを科学的調査に基づいて明らかにし、自然破壊の 進行を警告している。そして、もの言わぬライチョウの声なき声に耳を傾けて鳥から見た温 暖化を描くことによって、人類は自然と共存して初めて豊かな生活ができることを改めて考 えさせる。自然と多様な生物、そして環境問題に対する正しい知識と理解を深めると共に、 科学的視点で問題提起をし、豊かな自然の恵みを未来へつなげようとする願いのこもった 優れた自然科学番組であり、まさに高柳記念賞に相当する素晴らしい作品であると高く評 価されました。

番組名 NHKスペシャル「ハッブル宇宙望遠鏡 宇宙の始まりに挑む」
●放送局:日本放送協会    ●放送日:2010年4月11日(49分)

番組 写真

20世紀、人類は宇宙が137億年前のビッグバンで始まったことを知った。しかしその 後、どのようにして現在のような星や銀河のあふれる世界となったのかは、まったくの謎で あった。 今年1月、NASAは『最も遠い宇宙の果ての撮影』に成功。撮影したのは、高度600kmの 大気圏外に浮かぶハッブル宇宙望遠鏡である。そこには131億光年離れた天体が映し出さ れていたが、それは誕生まもない宇宙の姿そのものであり、宇宙始まりの謎を解く重大な手 がかりが隠されていた。

番組は、最先端科学が到達した「新たなる科学の地平」である深遠な宇宙創世の物語を、 ハッブル宇宙望遠鏡による美しい実写映像と、ビビッドかつ精緻なCGで描き、判りやすく 伝えると共に、計算によって宇宙誕生の再現に挑む日本人科学者も紹介している。 また、劇団ひとりを起用して科学への興味が薄い層にもなじみやすい構成として、科学知識 の普及・向上に挑戦した。幅広い層の人々に楽しみながら科学成果を伝え、感動と限りない ロマンを感じさせる素晴らしい番組として高く評価され科学放送高柳記念奨励賞に選ばれ ました。

番組名 「人類よ 宇宙人になれ 立花隆VS小学生」
●放送局:日本放送協会 ●制作社:株式会社NHKエデュケーショナル/有限会社アイ・エー・ダブル
●放送日:2010年5月1日(43分)

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作家立花隆氏のもとに、小学生から“論文”が送られてきた。書いたのは文京区立根津小学 校の6年生たち。著書「人類よ、宇宙人になれ」の文章が教科書に載っていて、授業に使われてい るのだ。先生が、出版社を通じて児童たちの感想文を送った。それを読んだ立花氏は感動した。 「大変刺激を受けた。この子供たちと“対等な立場で”議論したい・・・」と。 こうして日本を代表する知の巨人と小学生との真剣勝負の議論が実現した。

番組は「人類よ宇宙人になれ」と論じる立花氏に真正面から挑む子供達が、「宇宙的視野で 考え、異文化の刺激を受け、頭の中で違う意見をぶつかり合わせて自己形成してほしい」とい う氏の強いメッセージに、討論を通して考えを深めてゆく姿を描く。ステップバイステップや、 柔軟な発想の大切さを学び、宇宙的規模で科学する心や、正解は一つではないことに気づく など、思考が成長してゆく子供達の姿が頼もしく、立花氏に「次の世代には期待できないけれ ども、次の次の世代に期待する」と言わしめた。その生き生きとした発想と地球愛・人類愛が心 強く伝わってくる番組で、この独創的教育の場面を捉えた制作者の感性と企画力が高く評価 され高柳記念企画賞に選ばれました。

番組名
「ノンフィクションW」街が踊る!ビルが笑う!デジタルサイネージで変わる世界
●放送局:株式会社WOWOW ●制作社:株式会社ワンチャイ ●放送日:2010年8月2日(43分)

番組 写真

東京、NY、ロンドン―。世界の大都市の風景が、街角に設置された巨大映像スクリーン によって塗り替えられている。『デジタルサイネージ=電子看板』を使った街頭広告が飛躍的 に進化したのだ。更に進化する技術は、映像アートの世界を大きく変え、巨大ビルに投影さ れた映像を使って、人の動きに合わせて建物が踊ったり、笑わせることもできる。それは正に デジタル映像が多くの人々の「笑顔を創り出す」光景だ。

番組では、世界トップクラスの映像アーティスト、T.ワトソン氏を取材する。創作の舞台 裏から、フランスで行われた“建物まるごとをスクリーンにする”巨大イベントで、驚きの映 像が生み出される瞬間をとらえ、また全身麻痺になったアーティストを最先端技術の活用で 復活させた感動プロジェクトも紹介する。このように、インタラクティブ・サイネージに挑む クリエーター達の姿を通して、「人の心を動かしたい」というその思いが、とかく無機質なデ ジタル映像技術を人と人とをつなぐ技術へと発展させる感動、また創造力がもたらす『もの づくり』と、その完成の喜びを伝えている。このユニークな企画が高い評価を得て高柳記念 企画賞に選ばれました。

■ 放送期間/2009年10月1日~2010年9月30日 ■ 応募放送局/11局 ■ 応募制作社(プロダクション)/11社