高柳健次郎業績賞 2010年受賞者

「多視点立体映像システムの開発」

岩舘 写真

岩舘祐一
(NHK放送技術研究所 テレビ方式研究部 主任研究員 工学博士 1957年生)

[学 歴] 1981年 同志社大学工学部電子工学科 卒業
[職 歴] 1981年 NHK入局 旭川放送局
1985年 NHK放送技術研究所
1998年 (株)国際電気通信基礎技術研究所 知能映像通信研究所出向 研究室長
2000年 NHK放送技術研究所 主任研究員
2002年 電気通信大学大学院 客員准教授 兼任
  ● 主な受賞等
1990年度 電子情報通信学会 第53回篠原記念学術奨励賞
2008年度 映像情報メディア学会 第7回ハイビジョン・次世代テレビ技術賞

主な業績内容

岩館祐一氏は、多視点立体映像システムの研究において、複数カメラの映像から被写体の3次元モデルを生成する技術、およびスポーツ 中継のための多視点ハイビジョンシステムを開発した。

3次元モデル生成技術の研究では、24台のハイビジョンカメラを被写体の周囲に配置し、その多視点映像から被写体の3次元モデルを 生成する手法を開発した。本手法では、各カメラの被写体のシルエット画像から大まかな形状を生成し、グラフカット法などにより形状の補 正を行っている。生成した形状情報にカメラの画像をマッピングすることにより、任意の視点からの映像を作り出すことができる。本研究 の応用として、伝統舞踊の3次元映像アーカイブシステムを試作した。このシステムでは、能演者の3次元モデルと能舞台CGを合成し、イン タラクティブに視点を操作しながら能楽シーンを表示することができる。また、NHKドラマ「坂の上の雲」の中で、3次元モデルを群集シー ンの再現に応用し、衣装のゆらぎなども含めて、臨場感の高いシーンを再現することができた。

多視点ハイビジョンシステムは、半円弧状に配置された複数のカメラをその並びに従って切り替えることにより、スポーツ選手の動きを 視覚的に分かりやすく映像表現することを目的としている。本システムは、設置に手間がかからないこと、多視点映像をすばやく生成できる ことなど、放送特有の要求に応えることができるシステムである。本システムでは12台の固定カメラを用いているが、各カメラの映像に射 影変換処理を施すことにより、撮影方向を仮想的に動かせるように工夫した。

その結果、移動する被写体に対しても、すべてのカメラの方向を正確に向けることができる。本システムは体操選手権などのNHKのス ポーツ番組で利用された。