高柳記念賞 2010年受賞者

「広域帯マルチメディア通信ネットワーク技術の発展への貢献」

青木 写真

青木利晴
(株式会社NTTデータ シニアアドバイザー 工学博士 1939年生)

[学 歴] 1967年 3月  東京大学大学院博士課程 修了
[職 歴] 1967年 4月  日本電信電話公社入社
1992年 6月  日本電信電話株式会社 取締役通信網総合研究所長
1997年 6月  日本電信電話株式会社 代表取締役副社長
1999年 6月  株式会社NTTデータ 代表取締役社長
2003年 6月  株式会社NTTデータ 取締役相談役
2005年 6月  株式会社NTTデータ 相談役
2009年 6月  株式会社NTTデータ シニアアドバイザー
  ● 主な受賞等
1985年 電子情報通信学会 業績賞
1987年 逓信協会 前島賞
1995年 IEEE Fellow
2000年 電子情報通信学会 功績賞
2001年 電子情報通信学会 フェロー
2002年 IEEE Frederik Phillips Award
2004年 電子情報通信学会 名誉員
2006年 IEEE Founders Medal
2008年 電気通信 協会賞

主な業績内容

青木利晴氏は、1967年に日本電信電話公社に入社し、研究所において符号化理論、ディジタル交換方式、インテリジェントネットワーク 等の幅広い研究開発を行ってきた。

ディジタル交換システムの実用化では、システムの中枢部である交換機通話路スイッチ及び加入者系の開発において主導的役割を担い、 システムの実用化に多大な貢献を果たした。 加入者系装置まで含めた完全なディジタル化を成し遂げた世界初の交換システムであり、同氏 は、この成果により1985年に電子情報通信学会業績賞、1987年には前島賞を受賞している。 本ディジタル交換システムにより、我が国 の通信網の品質と信頼性が飛躍的に高まると同時に、多様な電気通信サービスが提供可能となり、ユーザの利便性が大きく向上した。

まだマルチメディアという言葉の無かった1990年頃から、広帯域マルチメディアネットワークや広帯域サービスの将来を構想し、研究開 発を牽引した。 その成果は、官民を巻き込んで推進したマルチメディアの共同利用実験(~1996年)で活用され、マルチメディアのサービス や技術が世の中で認知されるようになった。 1996年には、10Mビット/秒の情報を月額1万円程度(当時としては極めて大幅な低価格 化)でサービス提供する「メガメディア」構想を打ち出し、広帯域のサービスを利用料金面でも使いやすいものとする研究開発を先導した。 技術開発に並行して、同氏は、光ネットワークの加入者系標準の策定を行う国際標準化機構FSAN(Full Service Access Networks)の 設立(1995年~)を提唱し、各国や企業を説得してその発足・推進に尽力した。 FSANにおいてNTTが中心となって作成した光アクセス システムのデファクト標準は、ITU-T勧告として国際標準に採用され、光アクセスネットワークの大幅なコストダウンの実現に貢献してい る。 またネットワークの上で多様なサービスを展開するために通信と情報処理を融合したアーキテクチャを研究するTINA (Telecommunications Information Networking Architecture)国際コンソーシアムを設立(1992年~)し、副会長として研究を強 力に推進した。 その成果はOMG(Object Management Group)やParlay Groupなどの標準化グループに引き継がれ、新しいネット ワークに導入されている。

このように同氏は1980年代から1990年代にかけて、NTT研究所の研究者・研究所長・研究開発本部長・代表取締役副社長として、広 帯域マルチメディアネットワーク実現のためのコア技術となるディジタル技術、光技術、半導体技術、ソフトウェア技術や広帯域サービス等の 研究開発ならびに光ネットワークの導入を強力に推進した。 またその卓越した先見性とリーダーシップにより、国際的にも広帯域マルチメ ディア通信ネットワーク技術の研究開発推進と導入に多大な貢献をし、今日の光ブロードバンドネットワークの実現の道を築いた。

以上のように、同氏は21世紀の新しいIT社会の礎を築いてきたが、広帯域マルチメディア通信ネットワーク技術の実用化と国際標準化 における卓抜したリーダシップが認められ、IEEE (The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)からは2002年に Frederik Philips Awardを2006年にはFounders Medalを受賞するなど、その業績は世界的にも広く認められている。