研究奨励賞 2016年受賞者

●研究課題
「コランダム構造酸化物混晶による高機能半導体膜の開発」

金子 写真

金子 健太郎
(京都大学 大学院工学研究科 附属光・電子理工学教育研究センター 助教
  1984年生)

研究概要

現在最も注目を集めているコランダム構造酸化物混晶系の作製に世界で初めて成功し、その概念の提案を行った。例えば、コランダム構造をもつ酸化ガリウム(α-Ga2O3)を用いた自立基板型Shottky バリアダイオードは、SiCのオン抵抗の理論値の約7分の1の値を示し、次世代パワーデバイスの最有力候補とみなされている。

この報告を行った株式会社FLOSFIAは、金子氏が共同設立した規模20人ほどの会社であり、本研究が具体的な実用性をもっている事を示している。また、α-(Al,Ga)2O3、α-(In,Ga)2O3混晶は、3.7-9.0 eVの範囲でバンドギャップ変調が可能であり、これまでの半導体混晶では不可能であったバンドギャップ (Eg) 領域での変調を実現した。これは、従来のInN-GaN-AlN混晶系( Eg=0.7 ‒ 6.0 eV)では到達できなかった、超高耐圧デバイス、超短波固体発光素子作製が可能である事を示している。

さらに基礎研究の面でも、室温以上のキュリー点をもち磁性イオンが全率固溶する画期的な混晶磁性半導体であるα-(Ga,Fe)2O3の作製に成功した。それまでの希薄磁性半導体で問題となっていた結晶性の低下も起こりにくく、スピンデバイス用材料として高い可能性を秘めている。このように、これまで実現が困難であった新しい物性を示す半導体混晶群の提案と作製、及びその機能実現に世界で初めて成功した。