第47回 2016年 科学放送高柳健次郎賞 受賞番組

番組名 NHKスペシャル 「ミラクルボディー 世界最強の人魚たち」
●放送局:日本放送協会    ●放送日:2016年7月16日(49分)

番組 写真

人間の身体能力の可能性をテーマに、世界のトップアスリートの強さの秘密を最先端の科学分析と映像技術で解明していく「ミラクルボディーシリーズ」。この番組ではリオ五輪でも金メダルに輝き、五輪5連覇を達成したシンクロ・ロシア代表をとりあげました。

華麗なイメージのシンクロですが、水中では選手は息を止めたまま激しく動き続けなければならず、陸上動物である人間にとっては極めて過酷な競技です。そのシンクロ競技で不動のチャンピオンであるロシア代表。なぜ彼女たちは他の追随を許さないほどの激しい動きを「無呼吸状態」で行えるのか?

今回初となるロシア代表への密着で明らかになったのは、5歳から始まる長く厳しい訓練。幼少期からの長時間に及ぶ水中生活という特殊な環境が、何かしらの潜在能力を目覚めさせているのではないか?複数分野の研究者と共にいくつかの仮説をたて、たどり着いたのは「脾臓」という意外な臓器の働きでした。

分析を行った水性ほ乳類専門の動物学者にとっても、シンクロ選手を研究対象にするのは初めて。長い進化の歴史の中に眠る、人間の潜在能力の広がりをも示唆する今回の発見は、研究分野においても意義あるものとなりました。

番組名 カンブリア宮殿「世界が驚いた新素材革命!人工クモ糸&石から作る
“魔法の紙”」
●放送局:株式会社テレビ東京    ●放送日:2016年8月4日(54分)

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暮らしを変える新素材革命」は、カンブリア宮殿の500回SPとして放送しました。節目の放送は、特に未来につながるテーマにしたいと考え、新素材開発で世界が注目する2人の若き起業家を取材しました。1人は、人工クモ糸の量産化に成功したスパイバーの関山和秀氏。今までの合成繊維に比べて強くて軽く、ナイロンを超える伸縮性もあるという夢の新素材です。もう1人は、木と水を使わず、世界中どこでも大量に採れる石灰石から紙を作るTBMの山﨑敦義氏でした。

2人は「環境問題の解決に貢献したい」などと熱い思いで開発や資金繰りに取り組んでいました。そんな熱意に共感した世界の研究者が関山氏の元に集まる一方、山﨑氏の会社には大企業出身のベテラン技術者たちが「新しい技術を実現させよう」と協力していました。また、山崎氏は中卒で、関山氏は幼稚舎から慶応と対照的な学歴にもかかわらず、2人には意外な共通点がありました。受験をしなかったため人生について深く考え、それが起業につながったというのです。

技術開発だけでなく、2人の生き方にも焦点をあてたことで、素材開発という身近に感じにくいテーマに視聴者が共感してもらえたのではないかと思っています。

番組名 「 野生のいのち 死の連鎖 」
●放送局:北海道テレビ放送株式会社    ●放送日:2016年7月13日(24分)

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ワシにまったく興味がなかったディレクター。死骸や、翼を失った個体をつぎつぎに目にして、胸ふさがれる思いだった。「これはただごとではない」と感じた。

温暖化が進み、海や湖で思うようにエサがとれなくなった「海鳥」は内陸へと移動していった。ワシが群がったのは列車にはねられたエゾシカだった。列車が近づくと、満腹の重いからだで低空飛行。ワシも逃げきれなかった。線路には野生動物の死の連鎖があった。

どうすればワシの事故が防げるのか提言したかった。またエゾシカの事故も傍観したくなかった。そもそもエゾシカはなぜこれほどまでに線路周辺を行き来しているのか。シカが移動するエリアに線路があるものだと思っていた。しかし、そうではなかった。シカの目的は線路そのものだった。

事故防止のヒントは、別の野鳥にもあった。タンチョウだ。かつて釧路湿原の周辺では、線路の近くにタンチョウが巣をつくり、列車事故が相次いでいた。そこで営巣地の周辺では列車は徐行運転することになった。

さまざまな視点で、いのちを守る手だてを探った。提言は散漫であり、結論には至っていない。しかし、こうした問題提起が野生動物保護への一歩につながると信じている。

■ 放送期間/2015年9月1日~2016年8月31日 ■ 応募放送局/13局 ■ 応募番組数/15番組